概要 ▶ 早速だが、世間の広告についてのアプローチについて以前の記事「AIDMAとはセールス側から見た消費者心理の流れの「基本」(だった?)」(livedoor.com)に追加しておきたい。AIDMAというのは前回も書いたとおり、Attention・Interest・Desire・Memory・Actionというセールス側から見た消費者心理の流れを記号化したものである。さて、果たしてAIDMAという物差しだ
さて、果たしてAIDMAという物差しだけで販売促進効果が測れるのだろうか。
答えは「そうではない」というのが広告業界の意見だろう。
今回は読売新聞社広報局の読売ADレポート「ojo」(オッホ)(yomiuri.co.jp)から勉強していこう。
読売ADレポート「ojo」2003年3月号の「販売促進効果とコミュニケーション効果」(東京大学名誉教授・飽戸弘氏)(yomiuri.co.jp)によれば、広告の役割を以下のように説明している。
AIDMAで測っているものは何かと言えば、プロモーション、つまり販売促進効果です。広告を認知させ、商品に関心をもたせ、買わせる。アテンション、インタレスト、アクション、そういう販売促進効果を測る道具です。しかし、広告の役割はそれだけではありません。
典型的なのが、70年代に始まったおもしろ広告です。おもしろ広告は、人々を楽しませ、人々がそれによっていろいろな情報を得て、人々の味方になるような情報を提供する広告です。環境広告や9.11テロ以降に注目されたメッセージ広告、あるいは一般に企業広告と呼ばれるジャンルの広告も販売促進効果をねらったものではありません。高級ブランド品の新聞広告も、美しい写真で読者の目を楽しませます。それによって、読者の商品に対するあこがれを増幅しているわけです。
確かに企業全体のイメージを定着させるために行う広告(わかりやすい例で言えばトヨタのEcoの広告)などはAIDMAでは測定できない。
なぜならその広告は商品・サービスを直接的に表現していないため、AIDMAのDMAの部分が欠落せざるを得ないからだ。もちろんそのイメージ広告が企業のイメージ・印象を向上させ、「結果」として消費者に商品・サービスを購入してもらうのは変わらないが、あくまで間接的で、その広告ひとつだけ取り上げて売り上げが上がるという性質のものではない。
飽戸弘氏の文中でも出てくるがパイロット万年筆の「はっぱふふみふみ」は、それが商品・サービスの性能や性質を表しているとは言い難い。あくまで消費者にウケルための取っ掛かりでしかない。
こういったイメージ広告は企業側から見れば、AIDMAのAIの部分、Attention・Interestの部分を消費者に蓄積させ、商品・サービスを扱った広告でのAIの部分の敷居を下げることにその目的はあると考えられる。AI(もしくはAのみでも)を繰り返すことで、Desireは発生しないが、Memoryは発生する、つまり一種の「○○といったら△△」といったものを消費者に定着させることが可能ではないか。(ある意味、商品・サービスの内容は問わなくなってしまう)
こうしたイメージ広告が多くなるのは「安い」「お得」などを強調し、消費者を振り向かせるプロモーション広告だけでは、消費者に対してのアピールすることが難しくなってきた、ということだ。
ただ、飽戸弘氏は文中で
「結局、広告主を説得しやすい理屈がAIDMAなのです。」
と語るように、イメージ広告と違って、プロモーション広告は商品・サービスにダイレクト・直接的に反映されるため、広告主が広告に対してどこまで包括的(ホリスティック)に考えられるか、が重要になってくる。
イメージ広告はやはりマスメディアを利用するのが手っ取り早く、効果的ではないかと思う。テレビCMは半ば強制的に何度も刷り込みのように放送されるし、新聞も日本人の数多くは読んでおり新聞広告には意味がある。誰しもがそのテレビCMや新聞広告を見ていることにより、見ていない人を巻き込む集団効果は大きい(ここでは「アレ見た?」「見た見た。おもしろいよね。」「何?見ていない、どんなの?」といった会話で多くの人が見ていることで更に増幅される現象をいう)。
では集団効果はマスメディアでしか発生しないかと言えば、そうではないと思う。飽戸弘氏は文中で、
インターネットは非常に特殊なメディアです。新聞は、出ている情報は本物だとみな思うし、自分が見たときはほかの人も見ていると思えるメディアですが、インターネットは、自分が取りに行けば確かに詳しい情報は取れますが、それが本当かどうかわからないし、ほかの人が見ているとは思わないメディアです。みんなの話題になって、その情報が増幅効果をもってくるという集団効果はインターネットはないと見ています。
と書かれているが、それはその即時・瞬間的なものとして取り上げれば、インターネットは集団効果はないと言えるかもしれないが(非同期な部分が多い)、インターネットでの口コミサイトでの商品・サービスの人気や情報などは記録・アーカイブされるため、その口コミ情報を見る人は、その情報を元に購入を決定したり、「聞いた話では…」といった感じでホームページを作ったりする集団効果の増幅性は持ち得ているのではないかと感じる。しかし、これはインターネットの特性上、一度に関心のある人が同期して…といったことが起きないために緩やかな集団効果と見ることができる。
インターネットの集団効果を感じられるかもしれない場所は「価格.com」(kakaku.com)かもしれない。PCのパーツ関係はここで様々な情報や評価を得ることができる。圧倒的な情報や評価の書き込みの量は、目の前に人はいなくても、そこに集団がいることを感じることができる。大変おもしろいサイトだと思う。
飽戸氏の話から逸れるが、オンラインショップでは商品・サービスについて詳しく書いた方がよいと言われている。また、得意分野についてのコラムなどをメールマガジンやホームページで書くと良いとも言われている。
これは結局何を目的にしているのか、といったら、商品・サービスについて詳しく書くことは、ひとつひとつの商品・サービスに付いての販売促進に繋がるのだが、得意分野についてのコラムなどを加味することで商品・サービス個々ではなく、商品・サービスを扱っている企業・商店・個人の姿勢を消費者に見せているのではないだろうか。姿勢というのはイメージの世界であって、リアル・現実の世界ではない。だから直接的はないため、特にメールマガジンやホームページなどへのコラム掲載などはイメージ広告を意識して掲載しないと、効果がよくわからない…ということになりかねない。
さて、集団効果もしくは集団意識というのは最近特に強くなってきているのではないかと考えているのがコピーライターの前田知巳氏だ。
同じく読売ADレポート「ojo」2003年3月号で「本音のコンセンサスを得る媒体」の中で語られている。
博報堂生活総合研究所が今年出した生活予報では「非同期」という流れ、つまり世の中は、人それぞれにやりたいことをバラバラの時間にやる流れにあると言っています。その指摘は確かにそうだと思う。でも「非同期」が進めば進むほど、人はその一方で「だれかと同期したい」という欲求も深まるんじゃないかと思うのです。便利になるって、ある面で言い換えれば「孤独になる」ということじゃないですか。そういう意味で、インターネットの進化は必ずしもマス媒体を駆逐することにはならないと思う。お互いが影響しつつ、変化はしながらも存在していく気がします。
非同期の方向に強い力で流れていくと、逆に同期する力も強くなる。いわゆる反動といわれるものか。
つまり、人と接触する際に潤滑油としての働く「共通の話題」を「意識的」に持たなくてはならない(もしくは持たせなくてはならない)という時代に突入したのではないか。今までは意識せずとも、多くの人々が同じメディアを見ていたため、情報の同期化が行われてきた。しかし、非同期化が進むにつれ、情報の発信側は同期させるためには何らかのエネルギーが必要になってきた。もしくは情報の受信者が同期化できるメディアを再認識し始めた。そのエネルギー・メディアのひとつが新聞である、と(これは新聞広告の雑誌の話であるから、その点は十分考慮して読むべきであるが)。
つまり、広告の中にみんなが話題にするようなものを埋め込むことで同期化を促す必要がある、言い換えれば、SHARE・共有したくなるようなものを埋め込むような広告にしていかないと、広告はプロモーション的な力が強くなりすぎ、広告のコミュニケーション的側面の力(広がりを見せる力/伝染力)が発揮されないのではないか。そうした危惧がこのような発言を促しているのだろう。
このような情報受信者側の心理状態を考えずにAIDMAだけで広告の効果測定を行おうとすると、プロモーション広告のみの方が効果測定的には高い評価が出るであろう。しかし、広告主の目標は効果測定の値が高いことではなく、情報受信者側に広告主から発せられるメッセージを受信してもらい(もしくは受信した情報を他の誰かに発信してもらい)、浸透させ購買意欲を多方面からわかせ、結果として売り上げを向上させることが目標であるはずだ。AIDMAという物差しはあくまで主にプロモーション広告的なものを測るものだと認識しておかねばならないだろう。
【参考文書】
読売ADレポート「ojo」2003年3月号「販売促進効果とコミュニケーション効果」(飽戸弘氏)(yomiuri.co.jp)
読売ADレポート「ojo」2003年3月号「本音のコンセンサスを得る媒体」(前田知巳氏)(yomiuri.co.jp)
非営業マンの営業・ビジネス勉強部屋「AIDMAとはセールス側から見た消費者心理の流れの「基本」(だった?)」(livedoor.com)