[読書]『Twitter社会論』(津田大介著/洋泉社)|第3章 社会に広がるツイッター・インパクト(1)


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概要 ▶ まず『Twitter社会論』(津田大介著/洋泉社)の流れを紹介しておきます。第1章 ツイッターとは何か?1-1 ツイッターで今、何が起きているのか?(P12~)1-2 ツイッターとは何か?(P25~)第2章 筆者のツイッター活用術2-1 筆者のツイッター個人史(P48~)2-2 「tsudaる」技術(P59~)第3章 社会に広がるツイッター・インパクト3-1 ツイッターとジャーナリズム(P80~)
まず『Twitter社会論』(津田大介著/洋泉社)の流れを紹介しておきます。

  • 第1章 ツイッターとは何か?
  • 1-1 ツイッターで今、何が起きているのか?(P12~)
  • 1-2 ツイッターとは何か?(P25~)
  • 第2章 筆者のツイッター活用術
  • 2-1 筆者のツイッター個人史(P48~)
  • 2-2 「tsudaる」技術(P59~)
  • 第3章 社会に広がるツイッター・インパクト
  • 3-1 ツイッターとジャーナリズム(P80~)
  • 3-2 ツイッターと政治(P109~)
  • 3-3 ツイッターとビジネス(P139~)
  • スペシャル対談 勝間和代×津田大介 つぶやく力-ツイッターの可能性を探る(P159~)


さて、先日の「[読書]『Twitter社会論』(津田大介著/洋泉社)|第2章 筆者のツイッター活用術」で気になった所の次は「第3章 社会に広がるツイッター・インパクト」の「3-1 ツイッターとジャーナリズム」について気になった所をピックアップしてみます。



Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)
著者:津田 大介
販売元:洋泉社
発売日:2009-11-06
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■3-1 ツイッターとジャーナリズム

◇マスメディア・ジャーナリズムの3つの機能

メディアが持つ本来的な機能について、情報の「伝達機能」と権力への「監視機能」とした上で、以下のような「アジェンダセッティング(議題設定)」が必要だとしている。


●P80
ただ、昨今は社会問題が複雑化しており、単純な事実ベースの報道では市民が問題の本質を理解することが難しくなっている。その意味で現在のメディアや ジャーナリズムに強く求められるようになっているのは、問題を「伝える」だけでなく、複雑な社会問題に潜む様々な論点・争点をオープンにして解きほぐすこ とで、問題の解決策を提示し、その解決策への評価も含めて読者に提示していくことだ。


つまり、メディアは持っている様々な知識をどのようにリンクさせ、編集すると読者・視聴者がわかりやすいのかを意識しすることが大切ということなのだろうが、これは今のメディアでも行われていることなのではないか。



●P81
議題のピックアップにしても、解決プロセスの提示にしても、それは一見「客観的」に行われているように見えるというのがキモだ。


これは報道や新聞・テレビ・ラジオに対しての意識の問題なのではないかと思う。読者・視聴者サイドから信頼されている情報元の場合、無批判にそれを受け入 れてしまうのではないか。また、既存の情報を積み上げていき解決プロセスなどを提示するので、恣意的な情報をピックアップして説明したとしても、読者・視 聴者が論理的には正しいと認識してしまうことで誤った方向への誘導も考えられる。

他にも情報を提供するメディア側も全世界のすべての情報を持っているわけではなく、メディア毎の調査できるレベルの情報しか集められなく、その情報を元にしか作成できないのだから、ある程度は客観的ではあるが、メディア側の事情も多分に入っているということも認識しておかねばいけないと思う。


◇ハドソン川の旅客機不時着事故

●P87
投稿された真偽の不確かな1次情報――本書ではこれを「0.5次情報」と表現したい――に対して、どのように検証を行いどう信頼性を担保して1次情報にす るか。その過程で生じる「0.5→1」のプロセスが重要になってくるということだ。


この「0.5→1」への検証プロセスは、検証を行うことができるユーザーをどこまで集められるかが重要なのではないか。検証できるユーザーが情報を共有・発信し合うことで、0.5→1への担保が行われる。



●P88
受け手の意識としても「そんなのツイッターで先に知ってたよ」と、「0.5→1」のプロセ スに重きを置かない可能性もある。どこまで「0.5→1」型の報道にニーズが発生するのかという話は、メディアやジャーナリストの「ビジネスモデル」にも 関わる問題であり、容易に結論を出すことはできない。


徹底検証をしても、それに対してのニーズがなければダメということか。
報道のスピーディーさと性格さを分けて考えていかねばならないということか。

これはQ&Aサイト・サポート掲示板などでも同じようなことがいえるのではないだろうか。
ユーザー互助の仕組みでQ&Aサイトが運営されている場合、質問に対しての解決策が提示された場合、それが適切なのかどうかを検証するプロセスが発生しないと本当に役だったのか、適用できたのかがわからない。
Q&Aサイトなどでは多くの場合、「問題を解決できた場合はお礼の返事を書きましょう」などと注意書きがしてあることが多いが、これは検証を質問 者が行うことによって、回答者の0.5次的情報が1次情報になるために必要なプロセスであると考えても良いのではないか。



P88からTwitterのハッシュタグとリンクを使って、異なる新聞社の記者が情報を共有するという事例を挙げ、Twitterで効率的に情報を伝達できたことを紹介している。(2009年の米国ワシントン州の洪水)


Twitterは140文字しか入らないから、リンクが非常に有効ともいえるが、果たしてそれが読みやすいかどうかは別問題かと思う。Twitter上で のストリームををfix、固定する、アーカイブ化するのは誰が行うのかという点には疑問が残る。この点はニーズがあると考えられる。情報伝達上で、雑多に 情報が流れていくより、整理されたものを読みたいというニーズは必ずあるはずだ。


日本のYahoo!のニューストピックスは既にソーシャルニュースメディアとしての活動、プラットフォームを作りつつある。
トピックスに対して、リンク、解説などを編集権限のあるユーザーが自由に編集することでトピックスに対しての情報の価値が高まっていく。読者はこの編集さ れたトピックスを閲覧することで有益な情報に素早くアクセスできるというわけだ。こうした情報の固定化・アーカイブ化は今その情報に触れたばかりの読者に も情報を提供でき、リアルタイムで情報に触れていないユーザーにも情報を得られる機会を与えるという点では重要な活動なのではないか。


◇「洪水」をきっかけに生まれた新しい伝達型ジャーナリズム

●P91
今メディアやジャーナリズムが試みるべきは、インターネットを中心とした情報環境の変化に抗うのではなく、公共財化 する情報をいかにして信頼性を与え、その信頼性をいかに「金」に帰るかということの試行錯誤である。


これはメディアやジャーナリズムだけでなく、インターネット上にコンテンツを提供している人たち全般に言えることではないか。
ここら辺は『Free』とかを再読すべきかも。



◇政策形成のプロセスを透明化する「監視機能」

●P102
事後報道が少ないのは既存メディアやジャーナリズムの責任も大きいが、そうした事後の細かい監視 作業は調査報道と同じで非常に時間・金銭的にコストがかかる。メディアやジャーナリストも商売でアル以上、コストに見合わないことをやり続けるというのは 難しい。だからこそ、コストがかかる部分についてはツイッターなどを通じてCGM(ネットを通じて消費者が内容を生成していくメディアのこと)的に各々の ユーザーが得意分野で「監視作業」を行い、ちょっとでもおかしな気配を感じたらツイッター上で騒いで影響力の大きい人物やメディア、ジャーナリストにコン タクトし、彼らにその問題を深く「掘ってもらう」というやり方が、次世代の「事後チェック・調査報道的ジャーナリズム」として成立するのではないかと個人 的には思っている。


メディアやジャーナリストを「商売」と当たり前に津田氏が表現するところが非常に現実的であり、また、私のように企業に勤めている人間からすれば納得いく点である。

メディアやジャーナリストは監視作業のコストを下げるためにその道のエキスパート的ユーザーと常にコンタクトを取っておき、そのユーザーにはトピックに関 する情報を利用してもらうことを考えても良いのではないか。利用してもらう場合は、情報提供元たるメディア・ジャーナリストが出典であることを明記しても らうことで、情報提供元のメディアやジャーナリストへのフィードバックや情報へのアクセス、新しいビジネスチャンス、新しい情報提供があるかもしれない。
情報を死蔵させず、引用という形に似た形で利用されれば、その情報の価値は大きくなりブランディング・価値向上にも役に立つのではないか。


◇ツイッターで「構築機能」は実現できるか

●P104
ツイッター上で散漫につぶやいているだけでは構築機能が有効に働かないので、編集スキルのある人間がそれらの情報を 集約して、誰もがわかる形式に構築する必要はあるだろう。そうした役割を情報の扱いに長けたメディアの人間やジャーナリストが積極的に行っていくというの も、新しいジャーナリズムの形としてあり得るのではないだろうか。



ちょっと似ている感じの物としては2ch関係だが「痛いニュース」とか「日刊スレッドガイド」みたいなまとめ系サイトが挙げられるのかもしれない。これらのまとめ系サイトも、ある程度編集者が思うノイズを排除し、面白い点は強調するなどの編集作業が入っている。
ただし、基本はストリーム形式のまま(2chのスレッドのまま)なので、わかりやすい面もあるし、わかりづらい面もある。発言そのものがわかりやすいか?という点もあるわけで、発言を再構成・要約する必要がある場合もあるだろう。
また、2chのまとめ系サイトはレスのやりとりがおもしろいというところに重点が置かれていることも多いので、情報を得るための情報整理というよりはコミュニケーションを端から見て楽しむための情報整理の能力が必要なのではないだろうか。


◇ネット時代のジャーナリズム

●P108
「ウィキペディア世代」は不確かなものに出会ったとき、1人で、もしくは一致団結して、ソースの 信頼性を査定したり、ニュースをその情報源にまで遡り、調査し、チェックし、評価することができる。


ウィキペディア世代という言葉は面白い。こういう言葉は既にあるのかな。


つまりネットが進化・浸透していくことによってスタンドプレー(個人)の力の誇示もできるようになってきたわけだが、別の流れとして、ネットワークの力に よって共同作業が行いやすくなったことで人と人との繋がり、もしくはコンテンツとコンテンツとの繋がりをいかに構築できるかということも重要になってきたといえるのではないか。
繋がりを作ることでソースの信頼性なども高められるし、情報拡散力も増すのではないか。



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著者:津田 大介
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