販売の仕事は相手が求めた商品を売ることではない


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概要 ▶ 販売の仕事というものはレジ打ちや品出しなどの単純な仕事なのでしょうか? より良い販売の仕事は求めてきた商品を単に販売することではなく、ニーズを聞き出してニーズに合った適切な商品・サービスを販売することなのです。

リクナビの人事ブログで非常に勇気のある記事が書かれていました。内容は「新入社員が10日で辞めた」こと。

今回インパクトがあったのは、この記事が実名投稿で会社の名前も掲載されているところ。新入社員が辞めた話は、職場イメージが悪いのか、採用方法が悪いのではという印象を与えかねないため、なかなか正直には書くことが難しいと思います。広報の方もよくOKを出したなという印象です。

会社名は誰もが知っている家電量販店の「ヨドバシカメラ」。

20140422-リクナビ-ヨドバシカメラ-新入社員が辞めた-02

画像出典:ヨドバシカメラ採用情報(ヨドバシカメラ)



書き出しは以下の通り。

新入社員が退職した。

入社してわずか10日。


「この会社は自分に合わないと感じた」というのが退職理由。

あまりにも漠然とした理由なので、具体的になにがどう合わないと感じたのか尋ねてみた。

すると。

「販売はアルバイトの延長のような仕事。ずっと続けていく気にならないし、自分に向かない」とのことだった。
株式会社ヨドバシカメラ の人事ブログ:新入社員が退職した。(前編)| 【就活ならリクナビ2015】新卒・既卒の就職活動・採用情報サイト

販売は単純にレジを打つことでも、「これが欲しいのですが」と言われたら倉庫から商品を出してくることでもありません。そのレベルだけでスタッフとなれるなら、アルバイトでも問題ないでしょう。

でも店頭にいるスタッフとはそういうお仕事なのでしょうか。

●全てのお客様は商品のプロではない

この新入社員の方は実際にヨドバシカメラの店頭で買い物をしたことがあるのかわかりませんが、店頭に来る方を見ていると、商品が多数並んでいて悩まれている方や、あることをするために何を買ったら良いのかが分からない方、延々と商品を探している方など、様々なお客様がいらっしゃいます。

情報スキルがある方は、事前にkakaku.comなどの価格比較サイト・レビューサイトで商品をよく調べて、悩まずに指名買いをするのでしょうが、普通の方はそのようなことはほとんどしません。スペック比較は項目が違ったりして比較しづらいので、わかりやすい価格やブランド名を比較して、なんとなく自分を納得させて商品を選んでいます。

専門家ではないので当たり前と言えば当たり前なのです。


●聞き出して求めているものを明らかにする

そうした所に商品専門のスタッフがお客様からニーズを聞き出したり、予算を聞き出したり、設置場所や想定している使用状況を聞き出すことで、最適な商品をお客様へ提示できます。買いに来たお客様が来店してスタッフと話すまで気がつかなかったニーズ(潜在需要)も出てくるかもしれません。

ニーズやお客様の状況の中から商品を選択することは、商品を納得できる理由をお客様の中で理解できた状態といえます。この状態で購入したものであれば、購入後の満足度が高くなります。商品が先にあるのでは無く、ニーズや状況が先にあることが重要です。

結果的に、最初にお客様が求めた商品とは全く異なる商品・サービスを販売することになるかもしれません。でもそれが正解なのです。お客様は商品を購入したいのではなく、今ある問題や欲求を解決したい、ただそれだけなのです。


お客様が最初に「○○という商品が欲しい」という言葉を、言われたとおりそのまま満たすことが販売の全てではありません。


聞き役になれず、相談役になれず、目の前の商品を押し売るだけの販売は買った側の納得度が低く、商品購入後の満足度も高まりません。当然、売ったお店やスタッフへの不信感などが高まり、継続した販売は難しくなります。押し売り的な販売は、長期的な目で見れば売り上げに貢献できないでしょう。


●スムーズに買い物できることが売り上げに繋がる

とはいえ、現場のスタッフには販売ノルマ・売り上げ目標が課されているのも事実。

私も営業部に所属しているので、毎日の朝の打ち合わせでは前日の売り上げ金額の報告を見て考えさせられます。あまりノルマ主義が行き過ぎると問題ですが、売り上げ目標自体は指標として毎日の活動を振り返るには便利なものです。

売り上げ目標があることで、漫然とお客様に接するのではなく、より積極的に効率よくお客様にアプローチを掛けていかなければいけません。時間は全ての人が有限の時間しか持っていませんので、数多くのお客様にアプローチするだけでなく、ニーズをうまく拾い上げ、販売に繋げていく方法を考える必要が出てきます。

いわゆるセールストーク・営業術といわれるものですが、お客様からすれば、適切な質問・聞き取りでスムーズにニーズを拾い上げてもらえることは、買い物時間の短縮やイライラの解消になりメリットがあります。


セールストーク・営業術を磨くというと胡散臭い側面を感じるかもしれませんが、販売側とお客様側の双方にメリットがあることなのです。


●公務員でも相談しに来た人に関心を持たなければ同じ

今回のヨドバシカメラの新入社員の方は辞めて公務員で相談窓口担当を目指すそうですが、言われたことをするだけ、漫然と話を聞くだけ、では市民の満足度は向上しません。

「なぜここに相談しに来たのだろうか」とお客様に関心を持って積極的に聞き出す姿勢を持たない限り、相談窓口担当になっても「アルバイトと変わらないな」と思うだけでしょう。


ヨドバシカメラの販売スタッフでも、公務員の相談窓口担当でも、目の前にいるお客様・市民に関心を持たなければ、作業をこなすだけのオペレーターでしかありません。

その人が対応してくれて良かった、ここに来て良かったと感じてもらうには、お客様・市民へ一歩踏み込むことが大切なのではないでしょうか。


それでは、また。

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