概要 ▶ CSRの専門雑誌「オルタナ」の第34号は「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が企業を強くする」という特集。DはDiversity(多様性)・IはInclution(包摂)という意味だが、今後の企業発展のために必要な要素だという。それと中小企業について考えてみた。
- 第4回新潟CSRコミュニケーション~秋は読書会だよ~(Facebook)
今回はCSRの専門雑誌「オルタナ」の第34号を読んできて、それに対して、色々と話し合ってみるということだった。
今回の特集は「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が企業を強くする」というもの。
D&Iは初めて聞いたが、D&Iとは、DはDiversity(多様性)・IはInclution(包摂)とのこと。
包摂はDTPの文字に関することをしていれば聞いたことがある単語かもしれないが、包摂は簡単に言えばその中に含まれることと考えてもらえばいい。
つまり人材の多様性を尊重し、多様な人たちを社会や組織に取り込んでいく・参加してもらうことは、今後の企業の競争力を高めるために重要とのこと。
字面で見てみると、もっともらしいことを書いているが「本当」にそうなのか。
また課題は何なのかを考えてみた。
●読書会の進行方法と・雑誌「オルタナ」で気になった点
今回の読書会は、気になった点を挙げて、その気になった点を参加者で共有し、その中で議論したい内容を選択して、話し合うというものだった。私が挙げた気になった点は以下の4点。
★働く時間について
働く時間に自由度を持たせる→時間による評価→成果を評価するということになるが、成果を評価する側の正しい認識と、働く側の仕事の認識がきちんと合っていない・明確になっていないと成果の評価ができないので、時間に自由度を持たせることができないのではないか。★個人の仕事の量について
働く人が増えることによって、できる仕事量の総量が増えると見るか、それとも個人の仕事の量が少なくなっていく方向なのか。個人のその場に対しての量が減ることによって、他の場に対して仕事を求めるようになるのか?(一つの場からもらえる賃金は減ると考えるのが妥当だろう)
★中小企業の採用について
中小企業は大卒(大学を卒業した人)・正社員の採用が難しくなったとしているが、なぜか。本誌では何ヶ所か中小企業は大卒・正社員の採用が難しいということが挙げられている。これはなぜか。
中小企業の資本力が足りないためなのか、大卒のコストパフォーマンスが悪いと感じているのか?
また、大卒は中小企業に求められないとすると大企業に勤めるしかないのか。
※なお私は新潟大卒です。
★D&I化するために必要なことは何か
D&I化(働く人を多様化させる)ためには、仕事そのものを細分化できることが重要ではないか。仕事を分析し、その仕事に必要な能力は本当は何なのかを正しく認識できることが重要ではないか。
●議論:中小企業が大卒の採用が難しくなった理由は?
議論したい話題を参加者に提示して、出てきた意見をまとめると次の通り。(話の中で私が加えた意見もある)なお、私が挙げた議論したい話題は「中小企業が大卒の採用が難しくなった」とする点について。
★大学生の職業・社会への知識・理解が少ないため中小企業が認識されていない
大学生は、社会がどのような仕事で構成されているかどうかを知らない。大学生は、端的にわかりやすい、医者・弁護士・先生やテレビなどで宣伝している企業などは理解できるが、サービスを提供している企業などの仕事自体をよくわかっていない。
わかっていないから、その仕事を選ぶことをしない。
つまり中小企業などは選ばない。存在を認識していないから。
★中小企業側の求人の方法に問題があるのでは?
中小企業は求人を出すときにも、魅力ある表現で求人を出していないのではないか。その企業に勤めてもらうということは、無数にある企業の中から、選ばれるということ。
その無数にある企業の中で、働いてみたい!と心を動かされる表現を中小企業はしているか?
単なる仕事の内容だけを書いている状態になっていないか。
自社の魅力を伝えるための表現力が決定的に足りていないのではないか。
★中小企業に教育システムができていないため新卒採用が難しいのでは
新卒の採用が難しいというのは、新卒の育てる環境が育っていないということではないか。教育というものはコストがかかるもので、即戦力となる人を雇った方が、企業の負担は少なくても済む。
なので、そうした合理的な判断で企業は新卒の採用を進めないのではないか。
★社会や企業を知ってもらうための仕組み
インターンシップはどうか。学生はその企業が実際には何をしているのかを知らないのだから、実際に働いてもらって職種を実際に知ってもらうためには良いのではないか。
社会の構成要素のひとつを学ぶ良いきっかけにもなる。
★企業が行うボランティアを企業内の活動に活かす
ボランティア活動と新人教育という点からとある園芸会社が議論の中で紹介された。単に企業が周辺地域の掃除をするというものがボランティアではなく、携わっている職に関係のあるボランティア活動を行う。
その中で、ボランティア活動の場を新人教育の場として活用する。
通常の業務として、行うとクオリティや納期などに過大な期待を寄せられてしまう可能性があるが、ボランティアの場を活用することで、そうしたトラブルも防げる。
(私はボランティアであっても、同等のクオリティを求めるクライアント・消費者の心が変わる、もしくは合意をする意識を見せることが大事であると感じた)
実際、クライアントはできる限り低コストで仕事をしてもらいたいと考えているわけで、かといって、つきあいのある会社に「タダ」「無料」でやらせることは社会的にも良くない。
企業としては、きちんと対価を得られる仕事に対しては、しっかりしたクオリティを提供したいが、そうばかり言っていると、新人が現場に参加する機会が少なくなってしまう。
この間をうまく取り持ったのがボランティアでの新人教育という仕組みを作り上げたとのこと。
★企業と社会の接点が増えることで、コミュニケーション能力の向上に繋がる
ボランティア活動では、外部の人達(今回の例では主に地域の人達)と接する機会を得させることで、社会との結びつき・関連性を参加しているスタッフが意識できる。ボランティア活動として、社外の人たちとの接触がないと、その活動を認めてくれる人が少なくなる。
本人たちにフィードバックされずに、やる気の形成に繋がらない可能性がある。
また、社外の社会との接触を増やすことで、コミュニケーション力の向上にも繋がる。
★企業がボランティア活動をする意義
様々なボランティア活動に参加するのはなぜか。社会貢献ということもあるが、端的に言えば、会社の名前を知ってもらうためでもある。
名前を出さずにボランティア活動を行うことは、活動の会社への還元を否定するものであり、どんどん会社の名前を出していくべき。
「社会とともに会社も発展する」ことを社会が願うのであれば、社会には知ってもらって、会社のサービスを利用してもらわなければ、単にボランティアとして力を社会が企業から奪っているだけとなってしまう。
私は、名前を出せるところに出すというのは、根本的には広告と一緒であると感じた。
広告は主に代理店が場所を用意して、その場を購入して、企業の名前・サービスを掲載・表示し、広告をいた人に記憶してもらうものだが、ボランティアの場合、ボランティアの場に会社の名前を掲載・表示し、その場にいる人たちに会社名を記憶してもらうものである。
広告とは異なり、費用は社外に出ていかない(スタッフを動かすのでその分のコストは発生しているが)。
その点が大きく違う。
また、このボランティア活動は、広告と異なり、リリースやメディアからの取材などの二次利用ができる活動であるという指摘もあった。
★中小企業の表現力の問題について
中小企業の表現力が低いのはなぜか。そうした教育を怠ってきた、という根本的な問題もあるが、事業戦略が明確ではない場合、何を表現していっていいのかわからないということもあるだろう。
企業から情報を発信する人達の意識の問題もあるだろうが、社会から必要とされている情報が何なのかを強く意識し、その要求と会社の考えていることをキチンと繋げるための能力が必要だと感じた。
★縁故採用と評価の方法
中小企業が大卒などを採用しない理由は、縁故採用などがあり、採用枠自体がせばまっていることがあるのではないか。また、縁故採用の採用後の評価が、通常採用の人達と異なるということも考えられる。
入社しても、縁故採用がある会社は、そうした評価方法の違いに、通常採用の人達が馴染めずに、辞めてしまうこともあるのかもしれない。
●最後に
参加者から色々な意見が聞けて非常に有意義な読書会だった。また、今回課題だった特集記事以外も、読んでみると他の記事も「考えさせられる」記事が多かった。
CSRという面から、色々なアプローチがあるのだなと知れ、今後の活動に活かせそうだと感じた。
最後に、こうした研究会を開いてくれている今井さんと、参加者のみなさんに感謝します。
ありがとうございます。