K=100は黒ではありません。
Photoshopでやってしまいがちな10個の間違い - PhotoshopVIP
「Photoshopでやってしまいがちな10個の間違い」(PhotoshopVIP)で「K=100は黒ではありません」「K=100は濃い灰色」とあったので印刷関係者が騒然となった(一部)。
K100%は「濃いグレー」か?
日本に限って言うならはっきりと、「いいえ。違います」
K100%はグレー???いいえ、「黒」です。それでもリッチブラックを使うなら… | やもめも
とある。(違ったらすみません)
日本と欧米ではブラックのインキの濃度が違う
そもそも、印刷会社が使用しているCMYKのインキは様々な色の傾向や特性があり、全く同じ色ではないということを理解しておかなければならないが、日本印刷技術協会(JAGAT)のJAGAT研究調査部 部長 郡司秀明氏の記事によれば、日本と欧米ではK(ブラック・スミ・黒)のインキの濃度がそもそも違うということを指摘している。
欧米のKの方が、日本より濃度が薄いのだ。だから、PhotoshopVIPの記事の「K100は濃いグレー」というのは、「欧米では正しい」ことになる。
このため、下地の色が透けて見えない濃いブラックとしてのリッチブラックはC50、C60を含まないといけないと指摘されている。
欧米ではスミインキと言っても日本に比べて濃度が薄く下色をある程度透過するので、この彩度低下は日本ほど問題になりません。日本では「スミノセ」という言葉があるくらいですから、スミインキはスペードのエース並で、スミ下がどんな模様であろうと覆い隠してしまいますが、欧米では「リッチブラック」といってスミ下を処理しなくてはいけません。スミ下をC50~60%くらいの平網にしないと、下地が透けて見えてしまうのです。だから欧米ではリッチブラックというスミ下処理も代表的なDTP常識と認識されています。
【カラマネ極意1】スミインキのインキ量がポイント - JAGAT
RGB→CMYK変換について
こうした事情を良く理解しないで、日本ではPhotoshopのRGB→CMYK変換ではかなり以前から「SWOP」が使用されてきた。SWOPはアメリカの規格であるから、Kのインキの濃度が薄いためにKを多めに入れないといけない事情があった。日本ではKのインキの濃度が濃いためにこのまま流用すると、印刷時にKが強くなりすぎてしまうというわけだ。
このため、日本独自の「Japan Color 2001 Coated」などが誕生した。デジタルカメラが日本に普及しだしたころ、勉強熱心な人は欧米のDTP関連の専門書を勉強(真似)していました。例えばアメリカの印刷規格であるSWOPを使ってデジカメのRGBデータをCMYK変換していましたが、多くの印刷人は「デジカメは色が悪い。スミっぽい」と文句ばかり言っていました。しかし、真実はデジカメのデータが悪いわけではなく「日本の印刷条件に適したICCプロファイルがなかった」という唯の一点に尽きる問題だったのです。紆余曲折(うよきょくせつ)の末、日本(人)の日本人による日本人のためのICCプロファイルが、Photoshopに載ることになりました。そのプロファイルこそJapan Color 2001 Coatedで、日本の標準印刷用プロファイルなのです(図4)。
【カラマネ極意1】スミインキのインキ量がポイント - JAGAT
郡司氏の分析により違いを見てみると、そのカラーバランスの違いは一目瞭然だ。
以下のものがアメリカの規格SWOPでのCMYKのカラーバランスだ。中央より前からKが入ってきて、最後の方ではかなりKが多くなる傾向がある。
画像出典:【カラマネ極意1】スミインキのインキ量がポイント(JAGAT)
対してJapan Color 2001 Coatedはどうかというと中央付近からKが立ち上がり、後半はCMYを超えてはいない。KはSWOPに比べると抑え気味の仕様になっている。
画像出典:【カラマネ極意1】スミインキのインキ量がポイント(JAGAT)
切り替えてみてみると分かりやすいもしれない。このように、海外と日本ではインキにおいて、かなり違う傾向にあるわけだ。
画像出典:【カラマネ極意1】スミインキのインキ量がポイント(JAGAT)から作成
よって海外の記事をそのまま翻訳したものを日本で適用することはお薦めできない。
どこから「リッチブラック→C=90, M=90, Y=30, K=100」が出てきた?
そもそもこの「Photoshopでやってしまいがちな10個の間違い」(PhotoshopVIP)の記事の原文「10 Photoshop mistakes to avoid」(Design Reviver)には以下の様にしか書いていない。
英語が苦手という方も、言語はわからなくても良いが、以下の文章の見た感じで「C=90, M=90, Y=30, K=100」みたいな表現が無いことはおわかり頂けるだろう。
4. K=100 is not the same as black
If you have read other posts listing Photoshop mistakes to avoid then you will have noticed that almost all of them mention that K=0 is not the same as black, actually the color is a very dark grey. While you might be thinking so what if it is dark grey or black, fact is if you have a lot of these little differences then in the end you risk ending up with a product that looks more bleh than beautiful.
10 Photoshop mistakes to avoid - Design Reviver - Web Design Blog
つまり創作、もしくは作者の思い込み、思いでしかない。
とある方の調べでは2009年に「フォトショップを使うときの10個の間違い」(PhotoshopVIP)という記事を書かれていて、そこの値を持ってきただけでは?とのこと。
印刷会社によってベストのリッチブラックは値が違う
さらに「C=90, M=90, Y=30, K=100」という値も海外の記事を日本語訳したものだから、そこまでCMを入れる必要は無いだろうし、私が勤めている会社であれば、ちょっと赤が強い黒になりそうな感じ…。なので、会社ではMをCより10%下げた「C=50, M=40, Y=40, K=100」という値をお薦めしている。
吉田印刷所ではリッチブラックのカラーにC50% M40% Y40% K100%をお勧めしています。
リッチブラック の意味・解説|カラー|デザイン・編集・製版工程|DTP・印刷用語集
これが日本の基準というわけではない。
印刷会社によってベストと思う値が公開されているので、濃いブラックをCMYKインキで出してみたいと思った場合には依頼する印刷会社に値を確認することが重要だろう。
禁じ手の総ベタCMYK400%
なお、CMYK全部100%にすればより濃いブラックになるのでは?と思われる方もいるかもしれないが、それは禁じ手だ。印刷物が汚れてしまう場合がある。<
CMYK全て100%の総ベタといわれるカラーはインキの乾きに時間が掛かり、印刷のインキが紙から剥がれてしまうトラッピングの問題や印刷物の裏側にインキが付いてしまう裏移りなどの問題を発生させる場合があります。
この結果、印刷結果が不安定になり、印刷のムラができてしまいますので、CMYKのインキの総量が300%以下になるようにすることをおすすめします。
リッチブラック の意味・解説|カラー|デザイン・編集・製版工程|DTP・印刷用語集
データがそうなっていないか注意して入稿をお願いしたい。
通常インキではない濃いブラック
また、通常のCMYKインキではなく、特色と言われるもので濃いブラックを表現する場合もある。「デザインのひきだし19」では「深い墨インキ・サタンブラック&デビルブラック」として印刷サンプルも掲載されているので興味がある方は、見てみるのも良いだろう。
TwitterやFacebook・ブログなどのネットでの反応をまとめました
ブラックとリッチブラックの記事へのネットの反応 (1)(「K=100は濃い灰色!」「リッチブラックはC90% …)|jdash2000 site