概要 ▶ 『ソーシャルシフト』(斉藤徹著/日本経済新聞出版社)という書籍を知り合いに勧められました。この中から気になった部分を少しずつ書いていこうと思います。ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なことposted with ヨメレバ斉藤 徹 日本経済新聞出版社 2011-11-11 Amazon楽天ブックス今回はP33の「友人の言葉」について、個人的な感覚を交えつつ、思ったことを書いてみます。
『ソーシャルシフト』(斉藤徹著/日本経済新聞出版社)という書籍を知り合いに勧められました。
この中から気になった部分を少しずつ書いていこうと思います。
今回はP33の「友人の言葉」について、個人的な感覚を交えつつ、思ったことを書いてみます。
Facebook上では信頼できる友人たちとの間で「このお店はおいしい」といった感想や「ここの情報はためになる」といったサイト紹介、さらには家族との団欒、食事や旅行の写真や動画など、ありとあらゆる情報が共有されている。友人の言葉は、匿名の書き込みよりもはるかに信頼できる。
『ソーシャルシフト』(斉藤徹著/日本経済新聞出版社/P33)
「友人の言葉」が匿名の書き込みよりも信頼できるというのは理解できるし、同意できます。全く知らない人からのお薦めよりは友人の方が受け入れやすいです。
ただ、ネットには、友人と友人ではない人の書き込みがありますが、友人ではない人=匿名というわけではありません。匿名ではないですが、ニックネーム(ネット上の仮名・ハンドルネーム・(ランダムではない)ID)を伴って書き込まれた情報というものがあります。
これらの情報に信頼性が置けないかというとそうではありません。
※ここでの「匿名」はニックネームもなにもないもの「だけ」を指します。(意味のない記号の名前も含む)
ニックネームはそれだけで想いや人格を持っている
ニックネームを伴って書き込まれた情報は、ある特定の人物に紐付けがされています。それがどのような人物かは分かりませんが、ある種の人格を持っていることがほとんどです。
ニックネームの付け方で、演じたい人・物・イメージを表している場合も多いです。
この文化はインターネット発祥の文化ではなく、新聞の投書やラジオへの投稿でのペンネームという文化で既に存在していました。『新作文宣言』から引用します。
年齢層を上げて、たとえば「昼のひととき」とか「あなたの相談室」といったスタイルの番組になると、これが古典的な「悩める母」さんをはじめとして、
「内気な新妻」さん、「わたしゃ女中か!」さん、「日曜日は家にいたくない亭主」さん、「お迎えが待ち遠しい私」さん……
とかになっていく。この路線は匿名性を保ちながらも、内情告白の衝動を満たすことを志向し、同じような境遇の他人の共鳴を求めるために典型化、戯画化、演技化が進められている。 『新作文宣言』(梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博著/ちくま学芸文庫/P37)
名は人を表すというが、名付けは逆に、「人」を作り規定する。だから意図的に別の名前を名乗ろうとするものは、そのことで自分を表したいというよりも、じつは自分を覆い隠したい、もしくは作り替えたいという欲望を持っている。 『新作文宣言』(梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博著/ちくま学芸文庫/P39)
私はこの最後の「作り替えたいという欲望を持っている」という部分が大変興味深く感じました。
欲望というものは行動するための活力になるので、ものすごい力を持っています。
ましてや、新しい自分を作るという事に関しては、より力が入るのではないでしょうか。
表現する熱量の違い
Facebookでは自分が既に規定されてしまっていて、新しく発信される情報はその人に追加されていくスタイルです。しかし、ニックネームの人は、普段の自分を別のデータで上書きして、消し去って、更に新しい自分を表現しようとし、何もない白紙の状態から作り上げるわけで、大きな力(表現力・積み重ね)が必要です。
つまり、ニックネームで書き込んでいる人は、結果的に情報をお薦めする力が強い、という考えを私は持っています。
Facebookは伝えるまでのパワーは「知っている人からの情報だから」という点で低く抑えることができますが、書き込んでいる人がよほど情熱的にお薦めしない限り、「そうなのか、じゃぁ『いいね』ポチッっとな」くらいの影響しか与えない可能性もあるのではないでしょうか。
ニックネームでの書き込みの人は、ある意味短期勝負(レビューサイトの一期一会)で、長期勝負(情報発信の信頼度の積み上げ)でもあるので、相手を「おおっ、それなら」と動かす力を持続力とと共に持っています。あるいは持っていなければなりません。そうでなければ自分を書き換えられませんから。
もちろん、単に誹謗中傷したいが故のニックネームでの書き込みも多いと思います。しかし、そうした面が強調されすぎている感があり、それだけではないことを言いたいのです。
ニックネームでも、商品比較のレビューやQ&Aサイトなどでは、様々なレビューや回答を積み重ねてトップレビュアー・トップコメンターになり信頼を勝ち得ている方もいます。信頼を得ているいうことは、その人の書き込みで影響される人も多いということです。
友人だけでカバーできるのか
実際、知っている友人が自分の趣味範囲を全てカバーできている人は、あまりいないのではないでしょうか。Facebookのフィード上で自分の知りたい情報が都合良く流れてくるというのは幻想だと感じます。ましてや、Facebookのフィードは基本的にフロー型であり、投稿された情報はどんどん流れて行ってしまいます。自分の興味を持った瞬間に情報が流れてくるとは限りません。(※)
結局、知りたい情報は友人以外の意見を聞かざるを得ず、レビューサイトを見ることになってしまいます。
レビューサイトはこうした点からまだまだ生き延び続けるし、力を伸ばしていく余地はあると思います。
商品・サービス提供者は、こうした現実を受け入れ、ソーシャルメディアの友人の言葉のみならず、ネット上に存在するレビュー・感想・意見を共に活用していく必要があるのではないでしょうか。
それでは、また次回。よいソーシャルメディアライフを。
※もしFacebookが投稿に対して文脈やキーワードを解釈し、自動的に友人の過去の投稿をお薦め表示する機能ができたら世界は変わるかもしれません。