IE9のテキストはなぜ読みやすくなっているのか


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概要 ▶ On the Road Manuscript, #1 by Thomas Hawk全然Internet Explorer 9を使っていないのですが(※1)、色々調べてみるとInternet Explorer 9のテキストレンダリングの改良がおもしろいので紹介。Internet Explorer 9のテキストはなぜInternet Explorer 8より読みやすくなっているのか、というテーマです。
On the Road Manuscript, #1 by Thomas Hawk


全然Internet Explorer 9を使っていないのですが(※1)、色々調べてみるとInternet Explorer 9のテキストレンダリングの改良がおもしろいので紹介。


Internet Explorer 9のテキストはなぜInternet Explorer 8より読みやすくなっているのか、というテーマです。

前回のブログで書いた「IE8とIE9でWebフォントのレンダリングを見比べてみる」 の後半で書いたClearTypeの精度の違いについての補足です。
 

Windows 7のClearTypeはY方向のアンチエイリアシングが有効

前回はWindows 7のClearType(※2) はサブピクセルモデルを採用したことによって、より正確な描画ができることを書きましたが、Windows 7のClearTypeでは、もう一つ重要な改善点がありました。


それはY方向のピクセル補完(アンチエイリアシング)が動作するようになったことです。


実際の例を見てみましょう。
以下の例は上段が以前のClearType、下段がWindows 7のClearType。
20120317-Windows7-cleartype-02


20120317-Windows7-cleartype-01

例を見るとわかるようにX方向だけでなく、Y方向の擬似的な解像度が高まることで、より情報量を高める事が可能になっています。

Windows Presentation Foundation (WPF) の ClearType には、ぎざぎざになっている輪郭を滑らかにする y 方向レベルのアンチエイリアシング機能があります。 これは、東アジア言語を読みやすくするために特に重要です。これらの言語の表意文字では、緩やかな曲線の量が水平方向と垂直方向でほぼ同じであるからです。
ClearType の概要

「Windows Presentation Foundation(WPF)のClearType」とは、この記事で言えば「Windows 7のClearType」と同じ意味と思ってもらえば良いです。

東アジア言語ではY方向のアンチエイリアシングは非常に重要です。引用に書かれている「緩やかな曲線」もそうなのですが、東アジア言語の文字の中には漢字を始め、密度の高い文字も多く含まれているので、XY方向でともに解像度を高めることが、テキストでのコミュニケーションの品質を高めるために重要だと私も思います。



ここでもう一度 「IE8とIE9でWebフォントのレンダリングを見比べてみる」 のテキストレンダリングを見てみましょう。

まずInternet Explorer 8の表示。
20120314-Internet-Explorer-8-フォントレンダリング-02

そしてInternet Explorer 9の表示。
20120314-Internet-Explorer-9-フォントレンダリング-02


最初の文字の「文」のY方向(=縦方向)の表現力の違いがあることがわかりますし、本文中の「石」の1画目の横棒がInternet Explorer 8では見えなくなっていますが、Internet Explorer 9ではしっかり表示されていた、というのも、このY方向のアンチエイリアシングの機能によるものだと考えられます。



MicrosoftはなぜWindows XPにIE9を提供しないのか

このようにInternet Explorer 9はInternet Explorer 8よりテキストコミュニケーション体験の品質が高まるわけですが、Windows XPでInternet Explorer 9をサポートしない理由を考えているページがありましたので紹介します。(このページは「5 reasons why IE9 will not support Windows XP | Tech18」の翻訳&抜粋です)

IE9がWindowsXPをサポートしない理由は、以下の5つにあるようです。

■理由1
WindowsXPはDirect2Dに対応していない

■理由2
WindowsXPはセキュリティがIE8に最適化されている

■理由3
IE9対応のグラフィックボードがWindowsXPには装備されていない

■理由4
IE9は最新のハードウェアとOSで動くように設計されている

■理由5
IE9には分散型グラフィックカードとマルチコアCPUが必要
IE9がWindowsXPをサポートしない5つの理由 / 今週のIE9関連記事(追加) IE9まとめサイト

理由1のDirect2Dは先ほどから書いているDirectWriteの上位に存在する技術です。
これがなければ新しいClearTypeなどのテキスト処理などもできないので、仕方が無いですね。

他のグラフィックスに関する問題などはソフトウェアエミュレートすればいいという考えもありますが、ソフトウェアエミュレートでは速度的な問題もありますし、そもそもそのソフトウェアエミュレートをMicrosoftが頑張って作る意義がないので(苦笑)出てこないでしょう。

どうしてもというなら、Windows XPでVirtual PCを動かしてWindows 7を仮想マシン上で動作させて、そこでInternet Explorer 9を走らせる、ということが必要でしょう。そこまでする意義があるかは不明ですが。


最後に

いずれにせよWindowsの標準ウェブブラウザーでテキストでのコミュニケーションの効率をアップさせたい場合は、Windows XPを使い続けるのではなく、Windows 7+Internet Explorer 9ということになるでしょう。


Webフォントをサービスしているベンダーの方々は、是非とも一般個人ユーザー様、企業様へいち早くWindows 7+Internet Explorer 9への移行を済ませるよう働きかけをお願いしたいところであります。



注(この注は不確定な部分もあります)

※1: ※Web動作検証用にはもちろん使います。

※2:前回の記事でも「Windows 7のClearType」と書きましたが、新しいClearTypeの基礎技術になっている「DirectWrite」はWindows Vista SP2で搭載されました。このため、厳密には「Windows Vista SP2以降のClearType」が正しいようです。
Development of ClearType did not stop with the initial version. The latest version of ClearType―sometimes called Natural ClearType―is used for text rendering in DirectWrite, which is the Microsoft DirectX API used to render text in Internet Explorer 9. DirectWrite is supported in Windows 7 and in Windows Vista Service Pack 2 (SP2) with the Platform Update for Windows Vista.
About Text Rendering in Windows Internet Explorer 9 (Internet Explorer)
簡単な訳を付けると「ClearTypeの開発は初期のバージョンのまま止まったわけではない。最新バージョンのClearType-たまに「Natural ClearType」と呼ばれる-は、DirectWriteのテキストレンダリングに使われており、それはInternet Explorer 9のテキストレンダリングにも使用されているDirectX APIである。DirectWriteはWindows 7とWindows Vista Service Pack2(SP2)でプラットフォーム更新プログラムを適用しているバージョンでサポートされている。」という感じなので、Windows Vista SP2でもそうなのかもしれません。

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