概要 ▶ Adobe PDF Print Engineってのは印刷用途にPDFを使っているところには救世主なのかもしれないけど、もしかすると諸刃の剣なのかもしれない、とも思えて仕方がないのです。なぜこんなことを考えているかというと、会社のブログの方に書いてあるいわゆるIllustratorから直接書き出したPDFなどの処理が(Acrobatで正常に表示されてさえいれば)正常に行えるということだからです。ここ
なぜこんなことを考えているかというと、会社のブログの方に書いてあるいわゆるIllustratorから直接書き出したPDFなどの処理が(Acrobatで正常に表示されてさえいれば)正常に行えるということだからです。ここら辺はPDF/X-1aなどの正統派とも言えるPDFしか扱っていない人たちには全く分からないことなのかもしれませんが、これは非常に大きな一歩です。まさにAdobe PDF Print Engineは革新的なアプリケーションです。
特色+透明はPDF/X-1a変換時には鬼門
と思ったのも、ふとTrueFlowの出力の手引き第9版を読んでいて、「特色+透明」の処理ってのは大変だなぁと思ったから。まぁ乗算で特色同士を重ね合わせるとどんな色になるかはよくわかっていないのですが、少なくともIllustratorという製版ソフトウェア上ではそのような設定は可能です。
当然PDF/X-1aは特色はOKだけど、透明はNGなので、IllustratorからPDF/X-1a保存しようとすると透明の分割が行われるのですが、残念ながらIllustrator CS2だと特色がプロセスカラーに分解されてしまいます。これでは制作時に考えている状態と異なってしまいます。さぁ困った。
でも諦めないで。PDF1.4形式(Acrobat5形式)で保存すればOKだから。って何それ?とか思うかもしれませんが、Adobe PDF Print Engineというものは(たぶん)このような「特色+透明」もIllustrator上での表現と同じようにうまく処理してくれるはずです。というかそうでないと困る。(<実際関わっている仕事では特色のお仕事はほとんど無いので私は困りませんが…)
PDF1.4を活用しよう!
また、特色の話だけではなく、PDF1.4形式(Acrobat5形式)をRIPできるというのは実はすごいことで、これからの印刷データのスタンダードになるかもしれません、と本気で考えています。
PDF1.4形式は透明をそのまま含むことができるため、同じデータをPDF/X-1a形式で保存した時と比べるとデータのオブジェクト数や構造が非常にシンプルになります。これは入力側となるAdobe PDF Print Engineとしてはうれしいのかもしれません。変に…というのはおかしな話ですが…よくわからない品質で透明の分割が既に行われた状態で入力されるよりも、統一した基準で透明の分割をして出力した方が色々と都合がよいはずです。これはAdobeのInDesignにはネイティブデータを貼り込もうキャンペーンに近いものですね。出力の直前までは透明を生かそうみたいな。
またPDF1.4形式では透明の分割をする必要がありませんから、意図しないフォントのアウトライン化が必要ありません。つまりこのPDFは文字情報が意図した通りに残っている状態であるといえます。よってこのファイルをWEBなどで配付用としても使うことができます。Acrobatで用意されている「ページの読み上げ」機能も使うことができますし、GoogleなどのWEBクローラーにもそんなに変な風にはインデキシングされなません。アクセシビリティという観点からはとても良いものであるといえます。
逆にPDF/X-1aは様々に分割されたりアウトライン化されたりとアクセシビリティが低い。これは人間に対してだけでなく、オブジェクトが多いために後でPDFを何らかのソフトウェアで扱うときもオブジェクトの指定が非常に難しく、コンピューターに対してもアクセシビリティが低いということになってしまいます。
これは使い古した言葉ですがワンソースマルチユースという観点からは好ましくないように思えます。むしろPDF1.4形式(以降のバージョン)こそワンソースマルチユースを実現できるPDFのバージョンなのではないかとも思えます。
印刷用にPDF/X-1aで保存して、WEB用には別の形式で保存してというのはちょっとダサイというか古くさい感じがしますしね。(だいたい面倒だ、そんなの) 今後はPDF1.4形式(以降)でPDF保存をして後は印刷でもWEBでも使って、ということになるのではないでしょうか。
でもこれって今熱心に印刷業界向けのPDF規格である「PDF/X」を推進している人たちに何か水を差すみたいであんまり良い気分はしないのですが、Adobe PDF Print Engineってそれくらいインパクトがあって破壊力のある技術なのではないのかしらと思っています。(妄想ですが)PDF/X-1cとかPDF/X-4とか透明を含有しても良い規格も意外と出てくるかもしれませんね。
もっともっと活用できる(かも)PDF1.5
さて、DTP・印刷業界ではPDF1.5形式(Acrobat6形式)なんてPDF1.4形式以上にはるか遠い存在かもしれませんが、PDF1.5を活用することを考えてみると結構おもしろいのかなと思います。
PDF1.5形式は画像の圧縮形式に「JPEG 2000」形式が使用できます。JPEG 2000では従来のJPEGよりファイルサイズを抑えることができるのはもちろんですが、いわゆるレイヤー構造的に複数の解像度の画像を埋め込むことが大きく違うと言えます。
つまり、超高解像度(例えば1200dpi)のオリジナルの画像の所に、現時点での印刷に適した解像度(例えば350dpi)の画像を同居させることも可能なわけで、将来超高解像度に対応した刷版やドットパターンや印刷技術が出てくれば同一データを使用して、今の印刷よりも将来綺麗な仕上げをすることが可能になるかもしれないのです。夢がある話でしょ?(印刷の同一性は保てないけど(笑))
まぁその前にPDF1.5のJPEG 2000がそういうレイヤー構造的な画像に対応しているかが分かりませんが、JPEG 2000の機能上そういうことも可能なのではないかということでこういうことを書いてみました。
ここまでのものを最初のバージョンのAdobe PDF Print Engineが対応しているとは思わないけど、将来のバージョンのAdobe PDF Print Engineでは対応してくるのではないかなぁと思っています。こういった様々な機能こそPDFの懐の深さであり、柔軟さであるためです。ただ単にPDF/X-1aの処理がダイレクトにできるとかいう狭い範囲で考えるとAdobe PDF Print Engineという技術はたいしておもしろくもない技術なんだけど、PDFの様々な機能をRIPできるようになると考えれば非常に期待できる技術です。今後のAdobeの開発に期待しましょう!