最近ウェブ制作の界隈でマーケティングオートメーション(Marketing Automation:MAと書かれることも)という言葉を聞くようになってきました。
マーケティングの自動化というと、人が介在しないというイメージからAIとかプログラミング的なことなのかなとも思ってしまいますが、どういうものなのでしょうか。
詳しくわかっていないので、オンライン学習サイトの「スクー」で「成果を最大化するマーケティングオートメーション」という授業があったので、受講して学習してみることにしました。
このページはその授業を受講して、調べたことや、学んだことのメモになります。横文字や略字が結構出てくるので、調べながら授業に臨みました。
第1回の授業は「マーケティングオートメーション基礎」と題して、マーケティングオートメーションが生まれた背景や歴史、マーケティングオートメーションに必要とされる価値や機能などを学べます。
成果を最大化するマーケティングオートメーション(スクー)
- マーケティングオートメーション発祥の背景/歴史
- ルーツから辿るマーケティングオートメーションの分類
- 顧客中心時代に起きている4Pの変化
- 顧客中心時代のマーケティングオートメーションとは
- マーケティングオートメーションに求められている機能/価値
- マーケティングオートメーションを活用したエンゲージメント構築の例
講師は株式会社マルケト(Marketo)の弘中 丈巳さんです。
マーケティングオートメーションとは何か
まず、マーケティングオートメーションとは何かを理解する必要があります。
マーケティングオートメーションはデマンドジェネレーションを行うためのツールだということです。
と言われても、デマンドジェネレーションとは何なのでしょうか。
コトバンクで調べてみると「マーケティングキャンパスマーケティング用語集」では以下のように書かれています。
2005年頃からアメリカで使われだした言葉で、営業部門へ渡す「見込み案件の創出・発掘」の活動全般を指す。
展示会、セミナー、Web、メール、テレマーケティング、DM、広告など非常に多くの要素で構成されている範囲の広い言葉。直訳では「需要創出」となるが、BtoBでは「営業案件創出」と理解した方がわかりやすい。
デマンドジェネレーション(Demand Generation)とは(コトバンク)
デマンドジェネレーションとは、見込み客を見つける、見込み客を作る活動のことを指すのですね。
つまり、マーケティングオートメーションは見込み客を見つける、見込み客を作る活動を支援するツールということになります。
授業の中のスライドでは以下のように説明されていました。
- 見込み客のデータ収集〈Lead Generation〉
- 見込み客の啓蒙・育成〈Lead Nurturing〉
- 見込み客の絞り込み〈Lead Qualification〉
Nurturingは「育てる」といった意味、Qualificationは「資格」という意味で、見込み客のデータを集めて、見込み客を育てて、見込み客として資格があるかを判定することをデマンドジェネレーションというようです。
- nurtureの意味(goo辞書 英和和英)
- qualificationの意味(goo辞書 英和和英)
マーケティングオートメーションの分類
マーケティングオートメーションの細かな歴史や背景などは、『BtoBのためのマーケティングオートメーション正しい選び方・使い方』(シンフォニーマーケティング株式会社 庭山一郎著)に書かれているそうですが、今回は細かな背景を理解することではないので、ここでは省きます。
授業の中では、マーケティングオートメーションのツールを理解するには、ツールのルーツ(元となっている機能)を辿るとわかりやすいと解説されていました。
スライドでは以下の4つのルーツが紹介されていました。
- メール配信
- SFAの補完
- キャンペーンマネジメントシステム
- CMS(コンテンツマネジメントシステム)
メール配信がルーツ
メール配信がルーツというと、私は最近使い始めた「MailChimp」がそうなのかなと思いました。MailChimpというツールは単純にメール配信のリスト管理とメール作成・配信といったメールマガジン配信のために使うこともできます。
ただ、MailChimpは単なるメール配信だけではない機能があります。
メール配信を行って、反応があった人だけを対象に別のメールを送る機能や、逆に反応がなかった人だけを対象にメールを再送信したり別のメールを送ったりする機能があり、こうしたシナリオ(スクリプト)を予め設定しておくことで、自動的にメールを使った営業活動が展開できるというサービスがMailChimpにはあります。
まさに自動化(プログラミングされた)された営業活動ですよね。
SFAの補完がルーツ
2つめの「SFAの補完」と出ていますが、SFAとは何でしょうか。
SFAを調べてみると、「日本大百科全書(ニッポニカ)」(小学館)には以下のように説明されています。
携帯端末やインターネットなどの情報技術(IT)を使って企業の営業活動を支援するシステム、また、そのシステムを使って営業活動を効率化し、生産性をあげること。英語のセールス・フォース・オートメーションsales force automationの略語で、「営業支援」「営業支援システム」などと訳される。オフィスオートメーション(OA)が情報機器を用いて事務作業を効率化するのに対し、SFAは営業の自動化・効率化を意味する。
SFA(えすえふえー)とは(コトバンク)
最近は聞きませんが、そういえばOAなんて言葉もありましたね。
SFA(Sales Force Automation)は、日報や営業活動、商談内容などをシステムで管理することで、進捗状況の確認や、営業情報を部署内で共有し、効率よく営業活動を行うことを意味するということですね。
SFAの補完がルーツというと、私は最近使い始めた「HubSpot」がそうなのかなと思いました。こちらは基本となる軸がお客様ひとりひとりになっており、見込み客の情報を獲得し、見込み客をどのように顧客に変えていくかというプロセスを記録することで、営業の進捗状況や営業方法などの情報共有ができるようになっています。また、HubSpotはCRM(Customer Relationship Management)を軸に、入力や管理の自動化がされています。
◆キャンペーンマネジメントがルーツ
3つ目はキャンペーンを管理するツールがルーツのもの。これは私はどのようなものかはわかりませんが、Google AdWordsでもある目的を達成するための広告活動をキャンペーンとして、利用しているので、こうしたキャンペーンをベースに営業活動を自動化するものを指すのではないでしょうか(詳細がわからずすみません)。
CMSがルーツ
4つ目はWordPressなどコンテンツを管理するCMS(Contents Management System)がルーツのものが紹介されていました。4つ目のものは、今まですべての人に同じコンテンツを見せていた状態から、訪問者の属性や状態によって見せるコンテンツを出し分けて、訪問者が必要とされている情報を表示するといったものでしょう。
わかりやすい例で言えば、B2Bのサイトで、訪問者が既に資料請求をしている状態であれば「資料請求はこちら」というCTA(Call to Action)のボタンやリンクは必要ありませんよね。成約に向かって次の段階へ進んでもらうために、より詳しい事例や情報を得られるCTAのボタンやリンクなどを配置して、見込み客を育成していく施策が考えられます。これをCMS側で出し分けて、お客様の対応を行うCMSがルーツによるマーケティングオートメーションツールになりますね。
このCMSがルーツのマーケティングオートメーションツールでわかりやすい例などは、「HeartCore」(株式会社ジゾン)のCMSのレポートに掲載されています。訪問者への「おもてなし」を「自動化」することがCMSによるマーケティングオートメーションとのことで、こちらの記事も参考にしてください。
企業Webでカスタマーエクスペリエンスを改善しCVRを上げるのに必須の6つのポイント | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2017 Autumn
市場の変化により、4Pの観点が変化した
マーケティングを担当されている方なら「4P」という言葉を聞いたことがあると思います。
4Pとは、以下の4つの頭文字であるPを総称したものです。
- Product(製品)
- Place(場所・流通)
- Price(価格)
- Promotion(営業・宣伝・広告)
売上は、この4つの要素が組み合わさるマーケティング・ミックスをどう運用していくかで大きく変わってきます。いわゆる掛け算のようなもので、いくらProduct(製品)が良くても、Place(売る場所や方法)が悪ければ、売上は0になってしまいます。他のPrice(価格)も適正価格ではなければ売上は上がらないですし、Promotion(営業)が機能していなければ知られないので売上が上がらないということになります。
この4Pですが、市場の変化によってProductは「製品からサービスへ」、Placeは「マルチチャネルからオムニチャネルへ」、Priceは「売り切り前提からサブスクリプション(継続課金)へ」、Promotionは「新規獲得重視からLTV最大化へ」と変わってきているとのことです。
コトラー博士は『コトラーのマーケティング・コンセプト』(2003年・東洋経済新報社刊・フィリップ・コトラー著)の顧客の項目でこう記しています。
企業は、製品マーケティング中心主義から顧客所有中心主義へ見方を改めなければならない。新しいボスは顧客である──企業はこのことに気づく必要がある。
製品ライフサイクルよりも、市場ライフサイクルや顧客ライフサイクルに注目しなければならない。
製品中心から市場・顧客中心へ変化することで、4Pの内容が変わってきているといえるでしょう。
私なりの解釈ですが、4Pの内容の変化は次のように変わってきたのだと考えています。
製品(モノ)からサービスへの変化は、単純にハードからソフトに変わったということではなく、製品だけではなく、その製品周辺にあるサービスやエコシステムも合わせたものに焦点が変化していったということ。わかりやすい例では、単体としてのスマートフォン(製品)だけではなく、そのスマートフォンから利用できるサービス(アプリ・システム)が顧客にとって価値があるものだと認識が変わってきたと考えています。
マルチチャネルからオムニチャネルへの変化は、複数のチャネルであるマルチチャネルの情報を顧客が意識すること無く横断的に利用できるように環境が変化してきたということだと考えます。わかりやすい例では、PCで確認して、スマートフォンのアプリで購入する、スマートフォンの情報から実店舗に行って購入する、などが挙げられるでしょう。
売り切りからサブスクリプションは、継続的なサービスの提供によって、価格の付け方が変化してきたということでしょう。ウェブ制作者なら、Adobeのアプリを使っていると思うので、わかると思います。他にはAmazon Prime Videoのような定額制のビデオサービスや、車なら税金・車検・オイル交換などがコミコミのリース型の契約などもサブスクリプションタイプの価格と言えるでしょう。
新規獲得からLTV最大化(Life Time Value:顧客生涯価値…顧客が離れていくまでに企業に与える利益)への変化は、競争の激化によって新規獲得が困難になり、必要なコストが高まってきているという背景があります。このため、新規顧客より既存客からの収益率の方が高いので、LTVを重視した施策へ変化していると言えるでしょう。単純な単体の売上から、購入単価×購入頻度×期間という継続性を重視した営業方法に変わってきています。
【参考】
長期的な関係性を持つために考えなければならないこと
4PにおけるPromotionが「新規獲得からLTV最大化へ」と変わってきたことで、継続的な取引や関係性を持つことが重要になってきました。
そのために企業が考えなくてはいけないことは顧客体験の変化です。
授業では、顧客との接点をあらゆるチャネルを使って作っていかなければならないことと、顧客を個客として対応することが必要になってきており、「エンゲージメントの時代」が到来していると説明がありました。
よくあるセグメンテーションを行った顧客群は集団であり、個別の対応であるパーソナライズを行わなければ、関係性を高めることはできないと指摘されています。
カスタマージャーニーやペルソナという一人の「人にフォーカス」した仮説が重要になると私は考えました。ひとりの顧客(個客)としての対応をしていくには、これからは観察力・洞察力が重要なスキルになってきます。
ところで「エンゲージメント」とは何なのでしょうか。「デジタル大辞林」(小学館)によれば次のように説明されます。
広告などの各種マーケティング活動において、顧客の興味や注意を引きつけ、企業と顧客の結びつきを強めること
エンゲージメントとは(コトバンク)
企業と顧客の結びつきが強まることで、信頼感の向上はもとより、いわゆるマインドシェアの向上につながり、継続的な取引がしやすくなるのでしょう。
ここまで、授業ではマーケティングオートメーションができることに関してはあまり触れられてきませんでした。
しかし、マーケティングオートメーションのツールを導入する、しないに関わらず、デマンドジェネレーションの行動である「見込み客のデータ収集」「見込み客の啓蒙・育成」「見込み客の絞り込み」はマーケティングの活動として重要な活動で、対面営業を行う営業スタッフでも既に行っている活動なのではないでしょうか。
また、市場の環境(顧客が求めているモノ)が大きく変化してきたことで、お客様に対するアプローチも大きく変化してきたことがわかりました。
この大きな変化をサポートしてくれるツールがマーケティングオートメーションのツールということになります。
ここまで少し長くなってしまったので、ツールを使ってどのようにアプローチしていくかは、次回の記事にしたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。