みなさん、Twitter Blueを使っていますか?
最初はTwitter Blueを契約したけれども…という方も多いと思いますが、有料の機能としては微妙なものが多いですよね…。(動画をアップしないからかな)私は今までお世話になったというのもあるし、もう少し契約をしてみたいと思います。
さて、そんなTwitter Blueの機能に「太字」(Bold)と「斜体」(Italic)の機能が付きました。
PC版の画面でいうと、投稿欄の下の方に「B」「I」の文字があり、投稿欄の文字を選択してこれらのアイコンをクリックすると適用されます。
iOS版・Android版Twitterアプリでは現時点(2023年5月1日)では使えない機能のようです。
こちらの機能を使うときの注意点を紹介します。
注意すべきはWindowsユーザーで「斜体」
このTwitterの太字・斜体の機能で注意すべきは「斜体」の機能です。そしてWindowsユーザーです。
Windowsユーザーから見ると「斜体」を適用しても、日本語の部分が「斜体」にならず、元のフォントの形のままです。
見てわかるように英数字は斜体になります。
なおiOS版・Android版のTwitterアプリ上ではきちんと「斜体」になります。
(「場所:Earth」ってなんなの?(笑))
なぜこんなことになってしまうのでしょうか?
理由はメイリオに斜体がないから
タイトル落ちしていますが、そういうことです。
Windowsユーザーのウェブ版のTwitterでは日本語部分はメイリオフォントで表示されています。そのメイリオフォントに斜体を表現する字形がないため、日本語部分は斜体にならず、英数字部分だけ斜体になってしまっています。
メイリオフォントは以下の特徴があります。
- Windows Vista以降のWindowsに標準搭載されているフォント
- 可読性を高めたモダンさを感じるフォント
- 欧文の文字と和文の文字のバランスが取られたフォント
- 画面上(オンスクリーン)で文章をスムーズに読むことを目的としたフォント
- Windowsのフォント表示技術のClearTypeの能力を活かすためのヒンティング情報やストローク・リダクション情報を持つClearTypeフォント
なぜ「メイリオ」に「斜体」がないのか?
それでは、なぜ「メイリオフォント」に「斜体」がないのでしょうか?
MicrosoftがWindows Vistaをリリースされる時期に発行された『クリアタイプ メイリオ スクリーンで快適な読書を楽しむためのスタンダード』という小冊子があります。
以下のサイトによれば2006年5月に発行された小冊子とのこと。
「メイリオ」と大書きされた小さなA6版(148mmX105mm)の冊子だ。 Microsoft マイクロソフトが5月に、Windows Vista の ClearType 対応新日本語フォント「メイリオ」についての説明会を開催した時の資料なのだ。
aki's STOCKTAKING: Meiryo | メイリオ
こちらの小冊子は私も持っています。
この小冊子のP59ページに以下の記述があります。
Q.メイリオの欧文はイタリック italicがあるのに、 和文にはない理由は?
A.日本語の組版/タイポグラフィにはitalicの概念はないので、和文のイタリック体はまだありません。写植などの和文フォントでは光学的やデジタル的に基本書体(正体)を歪めて斜体を作りますが、欧文のitalic体とは本質的に違います。欧文タイポグラフィでは通常本文組の主役ローマン体(正体)に対し、italic体には伝統や慣例に添った使い方が確立されていること、italic体の起源は西洋の「書」であり、形だけのディストーションは極力避けられていることなどから、安易なデザイン処理は避けるべきです。とくに本文用書体では機械的に歪められた文字は可読性やスタイルが損なわれるため、欧文のitalicも必ず「一字一字手を入れて」デザインされます。横組がより一般化するにつれ、欧文のitalicと同様に、正体とペアで組まれる美しくバランスのとれた「斜体」の用法も確立され、デザインされる時がくると思います。
クリアタイプ メイリオ スクリーンで快適な読書を楽しむためのスタンダード(Microsoft)
つまり、フォントの作者が日本語のフォントに「斜体」の概念がないと考えているためです。
また「和文のイタリック体はまだありません。」(太字・着色は筆者による)としているところと、回答の最後にある「横組がより一般化するにつれ、欧文のitalicと同様に、正体とペアで組まれる美しくバランスのとれた「斜体」の用法も確立され」たら、そのときこそ斜体をデザインされる時期だという認識のようです。
将来、もしかすると斜体の字形も含まれたメイリオがリリースされるかもしれないですね。
ちなみにこの記事を書くに当たってClearTypeについて調べていたら小冊子のPDFが「ClearType font collection - Typography」のページで公開されているのを知りました!
長年PDFはないのかな~~って思っていたので、見つけられてとてもうれしいです!
資料保全のためWeb Archiveにも保存しました。
ウェブ版のTwitterのページのCSSを確認してみる
それではウェブ版のTwitterのTLのフォントの指定がどうなっているのかを確認してみましょう。
ブラウザーの「開発者ツール」で確認すると、以下の様になっています。(CSSのfont-familiy)
.r-1tl8opc {
font-family: "Segoe UI",Meiryo,system-ui,-apple-system,BlinkMacSystemFont,sans-serif;
}
この「"Segoe UI",Meiryo」の部分が今回の日本語部分に斜体が効かない理由です。
英数字の部分は「Segoe UI」をCSSで先に指定されているので、これが有効になります。「Segoe UI」フォントには斜体があるので、斜体指定(イタリック)にしたときに斜体の表示になります。
しかし、Segoe UIは日本語の部分がないため、次に書かれている「Meiryo」、つまり「メイリオ」フォントが適用されます。メイリオフォントには斜体がないため、まっすぐな形の文字がそのまま表示されてしまいます。
そのため先ほど紹介した画像の様に日本語部分だけ斜体にならず、英数字だけ斜体になるという奇妙な状態になってしまうのです。
対処方法は基本的にないが…
対処方法はありません。
Windowsユーザーが多く見ると考えられるTwitterアカウントの投稿では斜体の装飾はやめた方が良いでしょう。
モバイル版アプリでは問題がないので、そうしたユーザーが多く見ると考えられるTwitterアカウントでは、ほぼ気にする必要はありません。
それでは、よいTwitterライフを。
余談:15年くらい前にも…
Twitterで検索したら、2008年9月にも同じようなことを言っていました(笑)。
このときはTwitterのUIの中に斜体を使ったデザインを展開して、Macユーザーが見づらい的なことを言っていました。Windowsユーザーは影響がほとんどありませんでしたね。
Twitterの新しいWebデザインは斜体を使っているようだが、メイリオには斜体はないのだよ、バカめw {XP}
— 笹川純一(DTPオペ➡️ウェブ制作・EC運営担当) (@jdash2000) September 19, 2008